追い切りの見方|終い1Fの時計と坂路・ウッドの目安

追い切りの見方|重賞のべ1万9千頭の最終追い切りデータで終い1Fと坂路・ウッドの時計を調べた記事のアイキャッチ画像 競馬のデータ分析
横けん
この記事を書いた人=横けん
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追い切り(レース前の調教)を見るなら、まず最終追い切りの「終い1F(最後の200m)」の時計です。中央の重賞1,291レースに出た、のべ1万9,130頭を調べると、終いが速い方の20%の馬の複勝率は26.1%、遅い方の20%は15.4%でした。

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追い切りの見方の答え:最初に見るのは終い1F

ここでいう「速い方の20%」は、まず馬ごとの最終追い切りを、過去に重賞へ出た馬と同じトレセン(調教をする施設)・同じコース・同じ馬場でくらべて順位にし、その順位をその年の重賞出走馬の中で5等分したものです。

最終追い切りの終い1F(最後の200m)の速さ別に、重賞出走馬の勝率・複勝率・単勝回収率・複勝回収率を並べた表
終い1Fの速さ別の成績。速い方の20%は複勝率24.1%、遅い方の20%は14.7%。

終い1Fの段を速い方から並べると、複勝率は26.1%→22.7%→19.9%→18.1%→15.4%と、段を下るたびに下がりました。速い方の20%(3,477頭)と遅い方の20%(3,557頭)の複勝率の差は10.7%です(複勝率どうしの引き算)。ただし、終いが速い馬は人気にもなりやすいので、この差には人気の差も入っています(下の「人気にどこまで入っているか」の節で、人気の段ごとにくらべ直します)。

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全体の時計(4F)より、終いの時計のほうが差が大きい

新聞の調教欄で目立つのは、4F(最後の800m)の全体の時計です。こちらも同じ物差しで並べました。

最終追い切りの全体4F(最後の800m)の速さ別に、重賞出走馬の勝率・複勝率・単勝回収率・複勝回収率を並べた表
全体4Fの速さ別の成績。速い方の20%は複勝率22.5%、遅い方の20%は18.9%。

4Fの段では、速い方の20%が複勝率22.5%、遅い方の20%が19.0%でした。差は3.5%で、終い1Fの10.7%の3分の1ほどです。全体の時計より終いの時計のほうが、複勝率の差が大きく出ました。

坂路とウッド、どこで追い切ったかで成績は変わるか

中央の調教の場所は、茨城県の美浦(みほ)トレセンと、滋賀県の栗東(りっとう)トレセンの2つです。それぞれに坂路(坂道のコース)とウッドチップのコース(栗東はCW、美浦はWと呼ぶ・木くずを敷いた周回コース)があります。

最終追い切りを栗東の坂路・栗東のCW・美浦のW・美浦の坂路のどこで行ったか別の、重賞出走馬の成績の表
最終追い切りの場所・コース別の成績。美浦の坂路だけ複勝率15.0%と低い。

複勝率は、栗東の坂路20.8%・栗東のCW21.6%・美浦のW20.2%に対して、美浦の坂路だけが15.0%と低く出ました。美浦の坂路で仕上げた馬は人気も低め(平均9.2番人気)です。人気が低い馬ほど3着に入りにくいのは当たり前なので、人気の段ごとにくらべ直しました(下の「人気にどこまで入っているか」の節)。栗東の坂路の馬が上だったのは5つの段のうち4つ、10年のうち7年でした。ただ、最近5年(2021〜2025年)は差が小さく、5年のうち2年は逆でした。コースそのものの差なのか、そのコースを使う厩舎や馬の差なのかは、この数字だけでは分けられません。

坂路とウッドの時計の目安(直近3年の重賞出走馬の最終追い切り)

同じ「速い」でも、コースによって時計の水準が違います。しかも時計は年々速くなっていて、たとえば美浦のWの終い1Fの真ん中は、2016〜2020年は12.9秒、2023〜2025年は11.6秒です。そこで目安は直近3年(2023〜2025年)だけで出しました(馬場の良し悪しをすべて含む・単位は秒)。

▼ 2023〜2025年に中央の平地重賞へ出た馬の最終追い切りだけを数えた表です。

場所とコース直近3年の頭数4Fの真ん中終い1Fの真ん中速い方の15〜18%に入る終い1F
栗東の坂路2,367頭53.812.312.0以下(17.6%)
栗東のCW1,075頭52.711.611.2以下(16.1%)
美浦のW1,481頭52.311.611.3以下(17.4%)
美浦の坂路315頭53.712.512.1以下(15.2%)

たとえば栗東の坂路なら、終い1Fが12.0秒以下で、直近3年の重賞出走馬の速い方の17.6%に入ります。ウッドのコースは坂路より終いの時計が速く出るので、コースをまたいで時計をそのまま比べないことが大事です。

1週前追い切りはどう見るか

1週前追い切りは、レースの前の週にやる強めの追い切りです。前の週の月曜〜日曜で4Fがいちばん速い1本を順位にしました。物差しは、2021年6月までは坂路だけ、それ以降は坂路とウッドの速い方です(ウッドの時計が手元でそろうのが2021年7月から)。

最終追い切りの終い1Fの速さと1週前追い切りの速さを組み合わせた、重賞出走馬の成績の表
最終の終い×1週前の成績。どちらも速い馬は複勝率27.4%。

最終の終い1Fが速い方の20%に入った馬の中で、1週前も速い方の20%だった馬(770頭)は複勝率30.3%、1週前は遅い方の半分だった馬(1,416頭)は24.3%でした。ただし、最終も1週前も速い馬は人気にもなりやすく、人気の段ごとにくらべ直すと、1週前も速い馬が上だったのは5つの段のうち2つ、10年のうち6年(うち1年はほぼ同じ)だけでした。最終の終いが遅い馬は、1週前が速くても複勝率16.2%で、1週前が遅い馬の16.0%と変わりませんでした。なお、この段(525頭)の単勝回収率112%は、1頭の大きな配当で押し上げられた数字です。

人気にどこまで入っているか

追い切りが良い馬は、新聞やファンにも見られているので人気になりやすいです。人気の馬がよく3着に入るのは当たり前なので、知りたいのは「同じ人気の馬どうしでくらべても、追い切りが良い馬のほうが3着に入るのか」です。そこで人気を5つの段に分け、段ごとに2つの組の複勝率を並べました。

▼ 2016〜2025年の中央の平地重賞で、最終追い切りの終い1Fが速い方の20%の馬と、遅い方の20%の馬だけを数えた表です。

人気終い速い 頭数終い速い 複勝率終い遅い 頭数終い遅い 複勝率
1番人気395頭60.3%144頭59.0%
2〜3番人気622頭49.4%362頭42.3%
4〜6番人気784頭26.8%604頭22.5%
7〜9番人気654頭14.5%716頭12.8%
10番人気以下1,022頭5.7%1,731頭4.7%

同じ人気の段どうしでくらべても、5つの段すべてで終いが速い馬のほうが複勝率が上でした(1番人気ではほぼ同じ)。差は、全体の26.1%と15.4%ほど大きくはありません。たとえば4〜6番人気では26.8%と22.5%です。つまり、追い切りの差の多くはすでに人気に入っていて、それでも少し残る、という形です。

ほかの見方も、同じやり方でくらべました。「10年のうち何年で同じ向きか」は、年ごとに人気の段ごとの差をまとめて、Aの組が上だった年の数です。

▼ 2016〜2025年の中央の平地重賞の出走馬だけを数えた表です。

くらべたもの(Aの組-Bの組)人気5段のうちAが上だった段10年のうちAが上だった年
終い1F 速い方20%-遅い方20%5段8年
全体4F 速い方20%-遅い方20%3段8年
栗東の坂路-美浦の坂路4段7年
終いが速い馬で 1週前も速い-1週前は遅い2段6年(うち1年はほぼ同じ)

人気の段ごとにくらべても一番はっきり残ったのは、終い1Fでした。全体の4Fは段によって逆になり、年で数えても、差はほとんどの年でごく小さいものでした。1週前は段でも年でも半分ほどしか同じ向きになりません。全体の4Fと1週前は、これだけで人気より上と言える材料ではありません。

追い切りの見方を3つの手順にまとめると

  • 手順1:最終追い切りの終い1Fを見る。同じコースの目安(上の表)と見くらべる。
  • 手順2:どのトレセンのどのコースで追ったかを見る。時計はコースをまたいで比べない。
  • 手順3:終いが良い馬は、1週前も速かったかを確かめる(ただし人気馬ほどそうなりやすい点に注意)。

単勝回収率と複勝回収率は、終い1Fが速い方の20%で単勝75.6%・複勝74.9%でした。全出走馬(単勝70%・複勝72%)と大きくは変わりません。追い切りだけで買えば儲かるのではなく、ほかの材料と合わせて馬を絞るための物差しです。

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レースごとの追い切りの傾向

レースによって、勝ち馬の追い切りの型は違います。横けんの重賞記事では、レースごとに過去の勝ち馬の追い切りと、今年の出走馬全頭の最終追い切り・1週前追い切りを並べています。

この記事の作り方

  • 対象:2016〜2025年の中央の平地重賞(障害を除いた普通のレースの重賞)1,291レースの出走馬、のべ1万9,130頭(同じ馬が何度も出るので、実際の馬は4,953頭)。
  • 最終追い切り:競馬道オンライン(競馬ブックと同じ会社)の調教データの、レース週の追い切り。1週前追い切り:JRA-VANの調教データ(坂路は全期間・ウッドは2021年7月から)。
  • 速さの順位:最終追い切り=そのレースより前(2012年以降)に重賞へ出た馬の最終追い切りと、同じトレセン・同じコース・同じ馬場でくらべた順位。1週前=そのレースより前の3年以内に重賞へ出た馬の1週前追い切りと、同じトレセン・同じコースでくらべた順位(馬場は分けない)。くらべる相手が30本未満のときは「順位なし」。
  • 5つの段:くらべる相手に昔の遅い時計も入るので、時計が速くなった最近の年ほど上の順位に入る馬が多くなります。そこで速さの順位を、その年の重賞出走馬の中で並べ直して5等分しました(どの年も2割ずつ)。
  • 言葉:1F(1ハロン)=200m、4F=800m。終い=最後の1F。複勝率=3着以内に入った割合。回収率=100円ずつ買ったときの払戻の合計÷買った金額。差=複勝率どうしの引き算(20%と15%の差は5%)。
  • 人気の段:1番人気/2〜3番人気/4〜6番人気/7〜9番人気/10番人気以下の5つの人気の段。年ごとの向きは、その年の段ごとの差(2つの組の頭数の少ない方で重みづけ)をまとめたもの。

追い切りは「人気の先」を探す物差しになる

終い1Fが速い方の20%は複勝率26.1%と、重賞の全出走馬の20.3%を上回りました。追い切りの差の多くはすでに人気に入っていますが、終いの速さは同じ人気の段どうしでくらべても5つの段すべてで上回り、10年のうち8年で同じ向きでした(逆だったのは2016年と2025年)。決まった物差しで毎回同じように全頭を並べるだけで、人気だけでは見えにくい馬を見落とさずに済みます。新聞の調教欄を全頭ぶん自分で並べ直さなくても、毎週この物差しで重賞の出走馬全頭の最終追い切りと1週前追い切りを並べた記事を公開しています。レース前の追い切りチェックは、このブログの重賞記事をそのまま使ってください。

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