馬の去勢の効果は何走目から?|3走目から本気を出す説を検証

夜明けの競馬場のダートコースで、体から湯気の立つ馬を厩務員が引いている。左側に白い大きな文字で「馬の去勢の効果は何走目から?」、その下に「3走目から本気を出す説を検証」と書かれている 競馬の説を検証
横けん
この記事を書いた人=横けん
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こんにちは、横けんです。

出馬表で性別の欄が「セ」になっている馬。騸馬(せん馬)と呼ばれる、去勢した牡馬です。気性が荒くて力を出し切れない馬を落ち着かせるために、去勢することがあります。

では、去勢した馬はすぐに走るようになるのでしょうか?私はそうは思っていません。去勢したばかりの初戦や2戦目はまだ様子見で、3走ぐらいしてから本気を出してくるのではないか?あなたも、去勢後の初戦で人気になった馬があっさり負けて、何戦かしてから急に走った場面を見たことはありませんか?

そこで、去勢後の何走目から走るのかを、約11年分のデータで確かめました。確かめた疑問はこの3つです。

  • 去勢後の初戦・2戦目・3戦目で、成績と回収率はどう変わるのか?
  • 同じ人気の段どうしで比べても、去勢後3走目は全馬より良いのか?
  • 3走目のあと、4走目・5走目も良い状態は続くのか?

後半では、出馬表で去勢後何走目かを見分ける方法と、この結果をAIの材料に使えるかも書いています。

この記事は、馬王のデータで2016年1月〜2026年10月の中央競馬の平地のレース(障害を除いたふつうのレース・501,350頭)を調べ、去勢した馬3,314頭の成績を、去勢後何走目かで分けて単勝回収率・複勝回収率で確かめた結果です。

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この記事の要点

▼ 2016年1月〜2026年10月の中央の平地で、牡で走ったあと去勢した馬だけを、去勢明け何走目かで数えた表です。灰色の行は全馬です。

去勢後扱い単勝回収率複勝回収率
初戦(1走目)軽視(全馬より下)48.0%67.4%
2〜3走目狙える(全馬より上)106.6%89.4%
4〜5走目いったん下がる61.3%73.9%
6走目以降複勝は全馬より上64.7%80.0%
全馬比べる相手72.3%72.7%

色の見方(比べる相手=灰色の行):濃い赤=10%以上良い/薄い赤=良い/薄い青=悪い/濃い青=10%以上悪い

  • 去勢後の初戦・2戦目・3戦目で、回収率はどう変わるのか?→ 初戦は単勝回収率48.0%・複勝回収率67.4%と低く、2〜3走目は106.6%・89.4%で、全馬の72.3%・72.7%を上回ります。2走目と3走目のどちらが上かは、はっきりしませんでした。
  • 同じ人気の段どうしで比べても、3走目は良いのか?→ 7番人気以下で良く、複勝回収率102.2%(同じ人気の全馬は67.3%)。人気が下がれば成績が落ちるのは当たり前なので、人気の段ごとに比べています。
  • 4走目・5走目も良い状態は続くのか?→ 4〜5走目はいったん下がり、単勝回収率61.3%・複勝回収率73.9%。ただ6走目以降も複勝回収率は80.0%で、全馬を上回っています。

結論:去勢後の初戦は軽視、2〜3走目は狙える。2〜3走目は単勝回収率106.6%・複勝回収率89.4%で、10年のうち単勝8年・複勝9年で全馬を上回りました。本気を出すのは3走目を待たず2走目から。説より早かった、というのが答えです。

シリーズの次の回
去勢明け初戦の成績|馬体重が大きく減った馬は軽視でいい説を検証
去勢明けで馬体重が大きく減った馬は、軽視でいいのか?

去勢すると馬はどう変わるのか?

せん馬(騸馬)とは?

せん馬(騸馬)とは、去勢した牡馬のことです。出馬表では性別の欄に「セ」と書かれます。去勢した馬は種牡馬になれないので、引退後に繁殖に回ることはありません。

なぜ馬を去勢するのか?

一般に言われている理由は、気性を落ち着かせるためです。気性が荒くてレースで力を出し切れない馬や、能力はあるのに成績が伸びない馬に行われることが多いと言われています。去勢すると落ち着いて走れるようになる、というのが期待される効果です。

実際のデータでも、去勢する前の成績は良くありませんでした。牡で走った最後の3走は、複勝率10.7%・単勝回収率42.5%・複勝回収率30.6%。全馬の複勝率21.4%の半分しかありません。去勢は、成績が落ちて行き詰まった馬に行われることが多いということです。だからこそ、去勢した馬は人気が低くなりやすいのです。あなたも、去勢した馬の前走までの成績を見て、手が出しにくいと感じたことがあるのではないでしょうか?

去勢の効果が回収率に出るのは何走目からか?

答えは、去勢後の2〜3走目です。去勢後の初戦は単勝回収率48.0%・複勝回収率67.4%と全馬(72.3%・72.7%)を下回りますが、2〜3走目は106.6%・89.4%と全馬を上回ります。2走目と3走目のどちらが上かは、はっきりしませんでした。くわしい数字は、次の章の表で見ていきます。

去勢後の初戦・2戦目・3戦目の成績は?

数え方から書きます。同じ馬の出走を日付の順に並べ、性別が「牡」から「セン」に変わった最初のレースを去勢明けの初戦(1走目)としました。そこから2走目、3走目…と数えます。間に地方競馬のレースを走っていれば、それも1走と数えました(成績を数えたのは中央の平地のレースだけです)。最初からセンで出てきた馬498頭と、データの最初の2014〜2015年からすでにセンだった馬88頭、合わせて586頭は、いつ去勢したのか分からないので、この表には入れていません。

▼ 2016年1月〜2026年10月の中央の平地で、牡で走ったあと去勢した馬だけを、去勢明け何走目かで数えた表です。いちばん下の灰色の行は全馬です。

頭数平均人気複勝率単勝回収率複勝回収率
去勢前の最後の3走4,704頭7.6番人気10.7%42.5%30.6%
去勢明け初戦(1走目)2,141頭9.5番人気12.1%48.0%67.4%
去勢明け2走目1,871頭8.7番人気17.4%99.4%84.3%
去勢明け3走目1,527頭8.2番人気21.3%115.5%95.7%
去勢明け4走目1,293頭7.9番人気21.6%68.6%77.0%
去勢明け5走目1,121頭7.7番人気20.3%52.9%70.4%
去勢明け6走目990頭7.7番人気22.7%94.7%95.4%
去勢明け7〜10走目3,058頭7.8番人気21.1%68.0%85.9%
去勢明け11走目以降5,461頭9.1番人気15.2%57.4%74.0%
全馬501,350頭7.8番人気21.4%72.3%72.7%

色の見方(比べる相手=灰色の行):濃い赤=10%以上良い/薄い赤=良い/薄い青=悪い/濃い青=10%以上悪い

※「去勢前の最後の3走」は、あとで去勢したと分かってから決まる区分です。レースの前には分からないので、買い方には使えません(去勢した馬がどんな状態だったかを見るための行です)。

去勢明けの初戦は、単勝回収率48.0%・複勝回収率67.4%。全馬の72.3%・72.7%を下回ります。複勝率(3着以内に来た割合)も12.1%しかありません。初戦はまだ本気ではない、というのはデータでもそのとおりでした。

それが2走目で複勝率17.4%、3走目で21.3%まで上がります。3走目の21.3%は、全馬の21.4%とほぼ同じです。ところが平均人気は3走目でも8.2番人気で、全馬の7.8番人気より低いままです。走りはふつうの馬並みに戻っているのに、人気はまだ低いまま。そのぶん配当が高く、3走目の回収率は単勝115.5%・複勝95.7%でした。

2走目と3走目をまとめると、単勝回収率106.6%・複勝回収率89.4%。全馬の72.3%・72.7%を上回り、2016〜2025年の10年のうち単勝は8年、複勝は9年で全馬より上でした。去勢明けの2〜3走目は狙えます。

3走目は1,527頭のうち113頭が勝っていて、キワミ(2020年9月6日・小倉ダート1700m)は14番人気・単勝189.0倍で勝ちました。こういう大きな配当も、実際に買っていれば手に入った儲けです。複勝回収率も95.7%と全馬の72.7%を大きく上回っているので、1頭の大穴だけの話ではありません。

では、説のとおり3走目がいちばんなのでしょうか?表では3走目の数字がいちばん高く見えますが、2走目も単勝回収率99.4%・複勝回収率84.3%と、全馬を上回っています。3走目と2走目の差ははっきりしません。2016〜2020年は3走目が上(単勝131.7%・複勝111.9%、2走目は76.5%・65.8%)でしたが、2021年以降は2走目が上(2走目117.4%・98.8%、3走目102.7%・82.9%)と、時期によって入れ替わっています。本気を出すのは3走目を待たず2走目から。説より早かった、というのが私の答えです。

3走目のあと、4走目・5走目も良い状態は続くのか?

4〜5走目はいったん下がりました。同じ表の4走目は単勝回収率68.6%・複勝回収率77.0%、5走目は52.9%・70.4%です。ただ、そのあとも走りが落ちたわけではありません。6走目は94.7%・95.4%で、6走目以降をまとめると単勝回収率64.7%・複勝回収率80.0%。複勝は全馬の72.7%を上回り、10年のうち7年で全馬より上でした。

去勢した馬は、2〜3走目でいちばん狙いやすく、4〜5走目でいったん下がり、そのあとも複勝なら全馬より上、という流れです。あなたは去勢明け何走目まで追いかけていましたか?

同じ人気の段どうしで比べても、去勢後3走目は良いのか?

ここで人気の段ごとに比べるのには理由があります。人気が下がれば、3着以内に来る数が減るのは当たり前です。人気は馬の強さの目安だからです。去勢した馬は人気が低いことが多いので、全部をまとめて比べると「去勢明け何走目だから」なのか「人気が低い馬が多いから」なのかが区別できません。知りたいのは、同じ人気どうしでも、去勢後3走目は1〜2走目や全馬より上なのかです。

▼ 2016年1月〜2026年10月の中央の平地で、牡で走ったあと去勢した馬の去勢明け1〜2走目・3走目と、同じ人気の段の全馬を数えた表です。各段の灰色の行が比べる相手です。

人気の段頭数複勝率単勝回収率複勝回収率
1〜3番人気去勢明け1〜2走目463頭45.6%84.8%79.3%
去勢明け3走目274頭54.4%82.7%89.2%
全馬107,778頭52.3%79.2%82.6%
4〜6番人気去勢明け1〜2走目716頭24.7%72.6%78.9%
去勢明け3走目317頭28.7%77.4%82.3%
全馬107,712頭26.8%78.6%77.4%
7〜9番人気去勢明け1〜2走目892頭12.8%69.5%84.0%
去勢明け3走目326頭15.0%105.6%86.4%
全馬105,139頭13.2%75.0%74.7%
10番人気以下去勢明け1〜2走目1,941頭4.2%69.8%68.9%
去勢明け3走目610頭5.9%155.3%110.7%
全馬180,721頭4.5%62.8%62.9%

色の見方(比べる相手=灰色の行):濃い赤=10%以上良い/薄い赤=良い/薄い青=悪い/濃い青=10%以上悪い

差が出たのは、7番人気より下の人気がない馬でした。10番人気以下の3走目は複勝回収率110.7%で、同じ人気の全馬の62.9%を大きく上回ります。7〜9番人気も複勝回収率86.4%で、全馬の74.7%より上です。

7番人気以下をまとめると、3走目は936頭で複勝回収率102.2%。同じ人気の全馬は67.3%で、10年のうち8年で全馬より上でした。単勝回収率も138.0%(全馬は67.3%)と悪くなってはいません。ただ、勝ったのは936頭のうち26頭だけで、数頭の大穴で数字が大きく上下します。単勝の数字は、そのつもりで見てください。

いっぽう6番人気までの人気馬は、3走目でも単勝回収率79.9%・複勝回収率85.5%で、同じ人気の全馬(78.9%・80.0%)とあまり変わりません。人気になっている3走目は、もう走ることが見抜かれていて、配当の妙味が少ないということです。去勢後3走目は、人気がないときこそ狙い目です。あなたなら、去勢後3走目の12番人気の馬を買いますか?

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出馬表を見たら、どう扱えばいいのか?

  • 去勢後の初戦(1走目)は軽視する。とくに人気のない馬(4番人気以下)は単勝が低い。1〜3番人気は頭数が少なく、全馬と区別できません。去勢明け初戦の4番人気以下は1,955頭で単勝回収率43.6%(同じ人気の全馬は70.4%)、1〜3番人気は186頭で93.9%(同じ人気の全馬は79.2%)でした。
  • 去勢後の2走目・3走目は狙える。3走目で7番人気より下の馬も狙える(複勝の数字がいちばん安定しています)
  • 去勢後4〜5走目はいったん下がる。6走目より先も、複勝なら全馬より上

去勢明け何走目かは、出馬表の性別だけでは分かりません。予想のコツは、その馬の過去の成績を見て、性別が「牡」だった最後のレースを探すことです。その次のレースが去勢明けの初戦なので、そこから今回が何走目かを数えます。去勢明けの初戦の86%は、3か月(13週)以上の休み明けでした。長い休みの前後で性別が変わっていないかを見ると見つけやすいです。

何戦目から巻き返すのかという話は、「昇級戦で負けた馬もクラスに慣れれば巻き返す説を検証」でも確かめています。あわせて読むと、何戦目で狙うかの考え方が広がるはずです。

AIの材料に使えるか?

「去勢明け何走目か」を、私の予想AIの材料に足したらどうなるかも試しました。結果は、2024〜2025年のレースで試しても、予想の精度(どの馬が勝つか・3着に入るかの当たり具合)に意味のある上乗せはありませんでした(ここで測ったのは回収率ではなく、予想の精度です)。去勢明けの馬だけでAIの予想と実際の成績を比べると、ずれのある年もありましたが、ずれの大きさや向きは年によって変わりました。安定したずれではないので、『去勢明け何走目か』を足しても、AIはそれを使って精度を上げることができませんでした。

よくある質問

去勢すると馬はどう変わりますか?

一般には、気性が落ち着いてレースで力を出し切れるようになると言われています。データでは、去勢後の初戦はまだ成績が悪く、2〜3走目で単勝回収率106.6%・複勝回収率89.4%と全馬を上回りました。効果が回収率に出るのは2〜3走目からです。

去勢後の初戦の成績はどうですか?

良くありません。2016年1月〜2026年10月の中央の平地で、去勢後の初戦は複勝率12.1%・単勝回収率48.0%・複勝回収率67.4%でした。全馬(複勝率21.4%・72.3%・72.7%)を下回ります。

去勢後は何走目が狙い目ですか?

2走目と3走目です。2〜3走目は単勝回収率106.6%・複勝回収率89.4%で、全馬(72.3%・72.7%)を上回りました。2走目と3走目のどちらが上かは、はっきりしません。4〜5走目はいったん61.3%・73.9%に下がりますが、6走目以降も複勝回収率は80.0%で全馬より上です。

せん馬(騸馬)とは何ですか?

去勢した牡馬のことです。出馬表では性別が「セ」と書かれます。気性を落ち着かせて、レースで力を出し切れるようにするために去勢することがあります。

まとめ

  • 去勢後初戦:単勝回収率48.0%・複勝回収率67.4%(全馬は72.3%・72.7%)
  • 去勢後2〜3走目:106.6%・89.4%(2走目と3走目の差ははっきりしない)
  • 去勢後3走目の7番人気以下:複勝回収率102.2%(同じ人気の全馬は67.3%)
  • 去勢後4〜5走目:61.3%・73.9%/6走目以降:64.7%・80.0%

騸馬は3走目から本気を出す説は、答えが説より早いものでした。初戦が走らないのは説のとおり。でも本気を出すのは3走目を待たず2走目からでした。

逆に言えば、去勢後の初戦を消して、2走目・3走目の人気がない馬を拾うだけで、あなたの買い目は変わります。前走までの成績が悪いので、ほかの人が手を出さないところを拾えるのが、この説のいちばんおいしいところです。

こういう「なんとなくそう思う」を、約11年分を1頭ずつ数えて確かめるのは手間がかかります。その手間は私が先に引き受けて、これからもこのブログで説の検証をお届けしていきます。あなたが確かめてほしい説があれば、ぜひ教えてください。

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