私は毎週、レースの前日にAIが出した印をそのまま公開しています。そのAIに読ませる材料をどう増やすかを3年ずっとやっているのですが、この夏、自分の見立てを1つ本気で測ってみました。
「前走のコーナーで、うまく位置を上げられずに下がってしまった馬のほうが、次のレースで妙味が出るのではないか」。ずっとそう思っていました。ついでに、うまく位置を上げた馬はもう評価されきっているので、次のレースでは妙味が消えるのではないか、とも思っていました。
2021年2月から2025年12月までの199,294頭で確かめました。結論から先に言うと、前半の見立ては当たっていて、後半の見立ては外れていました。この記事では、出てきた数字と、そこへたどり着くまでに私が踏んだ落とし穴を全部書きます。落とし穴のほうが、たぶん役に立ちます。
▶ 私が毎週150万円を賭けながら3年かけて作った競馬予想AIの全体像は、「競馬予想AIの作り方・完全ガイド」に最初から順にまとめています。
- 「コーナーで下がった」とは、何と何を比べた話か
- まぎれを消さないと、ただ人気薄を集めただけになります
- 19万頭の答え。下がった馬は単勝の回収率が9.1ポイント上でした
- 見立ての半分は外れました。「上がった馬」は土台とまったく同じ
- 下がった幅が大きいほど、妙味は大きくなりました
- 4コーナーを外から回っていた馬は、さらに上でした
- 危なかったこと①。コーナーの数を取り違えていました
- 危なかったこと②。私の集計のほうが壊れていて、逆の答えを出しかけました
- AIがもう知っていることの、言い換えではありませんでした
- 作った材料が、次の週に黙って消えていました
- ご自分で確かめるときに、この順番でやると近道です
- 持っている材料の並べ替えだけで、まだ伸びます
「コーナーで下がった」とは、何と何を比べた話か
先に言葉をそろえます。ここでいう「下がった」は、最初のコーナーでの位置より、4コーナーでの位置が後ろになったことです。3番手で回っていた馬が、4コーナーでは11番手になっていた、というような形です。

▲ 最初のコーナーの位置より4コーナーの位置が後ろなら「下がった」。この馬は着順も人気も下げて次のレースに出てきます。
私の見立ての中身はこうです。コーナーで後ろに下げられた馬は、着順が悪くなります。着順が悪いと次のレースでは人気が落ちます。ところが下がった原因は馬の力ではなく、位置取りの不利かもしれない。だとすれば、次のレースでその馬は「実際の力より安い」状態で買えることになります。
まぎれを消さないと、ただ人気薄を集めただけになります
ここが検証でいちばん大事なところです。何も揃えずに「下がった馬」だけを取り出すと、単勝の回収率は77.9%でした。残りの馬は69.1%なので、8.8ポイント上に見えます(%どうしの引き算なので、ここはポイントという言い方をします)。
ところが、下がった馬と残りの馬は中身がまるで違いました。AIに数えさせたところ、「下がった馬」の単勝オッズは真ん中で53.5倍、残りの馬は21.1倍。つまり「下がった馬」を集めると、勝手に人気薄ばかりが集まります。人気薄はもともと当たったときの配当が大きいので、これでは「人気薄を買ったら回収率が上がった」と言っているだけかもしれません。
そこで、比べる相手を揃えました。同じ単勝オッズ帯で、しかも同じ前走着順の馬どうしで比べるという形です。「下がった=前走で負けた」の言い換えになっていないかを確かめるために、前走着順まで揃えました。
もう1つ、読むときの基準を書いておきます。この期間の全部の馬を何も考えずに買うと、単勝の回収率は70.2%、複勝の回収率は72.7%です。これが土台(何も考えずに買ったときの水準)で、100%にならないのはJRAが売上から取る分があるからです。以下の数字は全部、この土台の上に何ポイント乗ったかという話です。
19万頭の答え。下がった馬は単勝の回収率が9.1ポイント上でした
揃えたうえで出した数字がこれです。
| 前走で何が起きたか | 頭数 | 単勝回収率の差 | 複勝回収率の差 |
|---|---|---|---|
| 2番以上うしろに下がった | 24,459頭 | +9.1ポイント | +5.5ポイント |
| └ かつ4コーナーを外/大外 | 6,186頭 | +12.1ポイント | +7.3ポイント |
| └ かつ4コーナーを内より | 18,273頭 | +7.6ポイント | +4.3ポイント |
| 2番以上前に上がった | 31,907頭 | -1.5ポイント | +1.1ポイント |
| └ かつ4コーナーを外/大外 | 14,627頭 | -2.6ポイント | +1.8ポイント |
| └ かつ4コーナーを内より | 17,280頭 | -0.1ポイント | +0.5ポイント |

▲ 赤が単勝、青が複勝の回収率の差です。左の3本(下がった側)だけが上に出ていて、右の3本(上がった側)は土台と変わりません。
揃え方を変えても答えは動きませんでした。オッズだけで揃えても、オッズと前走人気で揃えても、オッズと前走着順とクラスの3つで揃えても、下がった側は単勝で9〜11ポイント、複勝で5〜6ポイント上のままです。どの揃え方でも同じ答えが出るというのが、私がいちばん信用している形です。
見立ての半分は外れました。「上がった馬」は土台とまったく同じ
ここは正直に書きます。私は「うまく位置を上げた馬は、次のレースでは妙味が消える」と思っていました。外れました。妙味が消えるのではなく、土台とまったく同じだったのです。
本物かどうかを確かめるために、にせものの対照を作りました。同じレースの中で「該当」の札を無作為に配り直して、まったく同じ計算を400回やるという方法です。中身のないデータでも、まぐれでこのくらいの差は出る、という水準が分かります。
- 下がった馬……実測+9.1ポイントに対して、にせものの平均は-0.6ポイント。やり直した計算400回とも、実測には届きませんでした。
- 上がった馬……実測-1.5ポイントに対して、にせものの平均は+0.1ポイント。にせものでも普通に出る範囲でした(同じかそれ以上の差が出た回が32%)。
つまり「上がった馬は次で妙味が消える」は、私の思い込みでした。効くのは片側だけです。ここを混ぜて1つの材料にしていたら、打ち消し合って何も残らなかったはずです。
下がった幅が大きいほど、妙味は大きくなりました
「下がった」と一口に言っても、1番下がったのと10番下がったのでは違います。そこで、出走頭数に対して何割うしろに下がったかで線を引き直して、線引きを1つずつ振ってみました。

▲ 横軸は「出走頭数に対して何割うしろに下がったか」です。下がった幅を厳しくするほど、単勝も複勝もきれいに上がっていきます。
5%以上下がった51,293頭では単勝+3.7ポイント。40%以上下がった3,497頭では単勝+25.4ポイントでした。山が1つで、右肩上がりで、途中でひっくり返らない。これが本物の形です。
逆に言うと、線引きを1か所だけ決めて「効いた」と言うのはいちばん危ないということです。たまたま1か所だけ数字が跳ねているなら、それはまぐれと見分けがつきません。私は必ず線引きを10か所以上振って、山の形を見てから判断するようにしています。
4コーナーを外から回っていた馬は、さらに上でした
下がった理由は1つではありません。前が壁で下げたのか、大外を回らされて下げたのかで、意味が変わります。そこで4コーナーの進路と組み合わせました。
下がったうえに4コーナーを外から回っていた6,186頭は、単勝+12.1ポイント・複勝+7.3ポイント。内を通っていた18,273頭の+7.6ポイント・+4.3ポイントより、はっきり上でした。下がったうえに外を回らされていた馬は、実際の力より着順が悪く出ているということだと思っています。
これを、いちばん厳しい比べ方でも確かめました。同じレースの中で、ほぼ同じ単勝オッズの2頭を1組にして直接ぶつけるという方法です。こうすると馬場も展開も相手関係もオッズも、同時に消えます。2,928組でやったところ、下がったうえに外を回っていた馬のほうが単勝の回収率で40.0ポイント、複勝の回収率で18.0ポイント上でした。
危なかったこと①。コーナーの数を取り違えていました
ここから先は、私が実際に踏んだ落とし穴です。
最初、私は「そのレースのコーナーがいくつあったか」を、データの埋まり方から推測していました。ところがこれが間違いでした。私が使っている表では、コーナーの記録は「最後の4つ」を右詰めで入れる決まりになっていました。コーナーが2つのレースは3つ目と4つ目の欄に入り、コーナーが3つなら2つ目から4つ目に入り、コーナーが4つ以上のレースは全部いちばん右まで埋まるのです。
何が起きるかというと、コーナーを5つ回るレースと6つ回るレース(コースを2周する長距離)が、4つのレースに混ざったままになります。実際に数えたら、コーナー5つのレースが663頭、コーナー6つのレースが4,211頭、「4つ」に混ざっていました。
コーナーの数を事実の記録から取り直して分け直したら、こうなりました。

▲ コーナーが2つ・3つ・4つのレースでは答えが揃っているのに、コースを2周する6つのレースだけプラスとマイナスの向きが逆になりました。
コーナーが2つのレースは単勝+9.3ポイント、コーナーが3つのレースは+15.3ポイント、コーナーが4つのレースは+10.0ポイントでした。ところがコースを2周する3,634頭だけは単勝-33.7ポイントです。考えてみれば当たり前で、2周するレースの1周目で位置を下げるのは、ただの折り合いや道中の駆け引きであって、不利ではありません。
ここから引き出した決まりを書きます。レースの形が違うものを1つの数字にまとめない。まとめてしまうと、逆向きのものどうしが打ち消し合って「効きませんでした」という結論になります。効かないのではなく、混ぜたから消えただけです。
危なかったこと②。私の集計のほうが壊れていて、逆の答えを出しかけました
もっと背筋が寒かったのはこちらです。
最初に作った集計で年ごとの数字を出したら、「5年とも単勝はマイナス」というまるで逆の表が出てきました。全期間ではプラスなのに年ごとに割ると全部マイナス、という明らかにおかしい形です。
原因は、オッズ帯ごとの結果を足し合わせるときの重みの付け方でした。たまたま中身がほとんど動かなかった帯の重みが跳ね上がって、そのオッズ帯1つで全体の答えをひっくり返していたのです。重みの見積もり方を直したら、年ごとの数字は単勝で5年のうち4年、複勝で5年とも上に出て、全期間の数字ともつじつまが合いました。
これは私にとっては再発でした。同じ形の間違いを以前もやっています。だから今は、重みの付け方を2通りで計算して、出てきた2つの答えが同じ向きになることを毎回確かめるようにしました。片方だけで出た答えは、私はもう信用しません。
そして、こういうものは自分では見つけられません。私は予想の中身を変えるときは、必ず作ったAIとは別のAIに検証させてから入れることにしています。今回もそれで1件止まりました。
AIがもう知っていることの、言い換えではありませんでした
ここも通さないといけない関門です。前走の3コーナー・4コーナーの位置は、もともとAIに渡している材料の中に入っています。「新しい発見」に見えて、実はAIがすでに使っている情報の言い換えなら、足す意味はありません。
そこで、AIが出した予測確率そのものを揃えて測り直しました。AIの複勝確率と単勝オッズと前走着順の3つを揃えても、下がった馬は単勝+8.6ポイント・複勝+6.5ポイント残りました。下がったうえに外を回っていた馬は単勝+18.8ポイント・複勝+11.6ポイントです。
つまり材料はもう持っているのに、AIが使いこなせていなかったということです。ここが分かったのが今回いちばんの収穫でした。持っている材料を並べ替えて渡し直すだけで伸びる余地が、まだ残っているという意味だからです。
この結果をもとに、AIに読ませる材料を12本追加しました。データの列は3,821本から3,833本に増えています。まだ予想そのものには使っていません。別のAIの監査を通してから入れます。
作った材料が、次の週に黙って消えていました
最後にもう1つ、地味ですが致命的な落とし穴を書いておきます。
私のデータは毎週作り直しています。その作り直しには台本があって、台本に載っている列しか作られません。つまり、新しく足した列を台本に登録し忘れると、次の作り直しでエラーも出さずに静かに消えます。
実際にやられていました。8月11日に足した進路まわりの列を9月4日に見に行ったら、その列が9本ともきれいに消えていました。今回の12本も、監査で「台本に登録されていません」と指摘されていたのに登録し忘れていて、次の作り直しで消えるところでした。9月9日に台本へ登録して止めました。
エラーで止まってくれるなら気づけます。怖いのは、黙って消えるほうです。足した列が翌週も生きているかを目で確かめる、という工程を私は増やしました。
ご自分で確かめるときに、この順番でやると近道です
今回の検証でやったことを、順番にまとめておきます。何かの条件が効くかどうかを自分で確かめたい方は、この順でやると遠回りが減ります。
- まず比べる相手を揃える。単勝オッズを揃えないと「人気薄を買っただけ」になります。前走着順も揃えると「前走で負けた馬を買っただけ」も消せます。
- 揃え方を3通り以上変えて、同じ答えが出るか見る。1通りで出た数字は信じません。
- 線引きを10か所以上振って、山の形を見る。右肩上がりなら本物、1か所だけ跳ねているならまぐれです。
- レースの形が違うものを混ぜない。コースを2周するレースは、今回のように答えが逆になります。
- 中身のないデータで同じ計算をやってみる。まぐれでどこまで出るかを知らないと、出た数字が大きいのか小さいのか分かりません。
- 逆側も必ず測る。今回、私の見立ては半分外れました。外れた側を書かない検証は、自分に都合のいい話しか残りません。
持っている材料の並べ替えだけで、まだ伸びます
今回いちばん大きかったのは、新しいデータを買ってきたわけではないということです。前走のコーナー通過順は、もう何年も前から手元にありました。渡し方を変えただけで、単勝の回収率で9.1ポイント、下がったうえに外を回っていた馬に絞れば12.1ポイントぶんの上乗せが、19万頭の実測で出てきました。
これは希望のある話だと思っています。もう持っている材料の中に、まだ使いこなせていないものが残っているということだからです。しかも今回のように、AIの予測確率を揃えてもなお残るものが見つかる。新しい情報源を探しに行くより、ずっと安上がりで確実です。
そのかわり、こういうものは1本見つけるたびに、今回の落とし穴を全部踏みます。コーナーの数を取り違え、自分の集計に壊れた重みを入れ、作った列を消しかけました。私はそれを毎週このブログに全部書いていきます。私が先に転んでおくので、同じ穴は踏まなくて済みます。
次にやることも決まっています。この12本を別のAIの監査に通して、通ったら予想に入れます。4コーナーの進路をもっと細かく取り込む作業も残っています。進んだら、また数字つきでここに書きます。
この内容を実際に使った週の実戦記録(買い目と収支つき)はこちらです。→ 競馬で負けが続くときの考え方|16週中9週マイナスでも通算プラス



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