出馬表で騎手名の横に「☆」や「△」が付いている馬。減量騎手、いわゆる見習い騎手が乗っている馬です。斤量が1kgから4kg軽くなります。
この馬を、あなたはどう扱っているでしょうか。「軽いぶん有利」と見るか、「腕が未熟だから不利」と見るか。私は長いこと、なんとなく後者で見ていました。でも「なんとなく」では買い目に落とせません。
そこで25万頭で測りました(障害を除いた平地のレースだけです)。結論は「不利。ただし、その不利がオッズにまだ反映されていない分が確かに残っている」です。
ここで1つだけ、言葉の約束をさせてください。この記事では「ポイント」という言い方を使います。これはパーセントどうしの引き算のことです。3着以内に来る割合が33.0%から32.2%に下がったとき、「0.80ポイント下がった」と書きます。「0.80%下がった」ではありません。ここを取り違えると、話の大きさが40倍ずれてしまいます。
それでは順に書いていきます。
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まず、自分のAIに減量騎手の列が1本も無かった
私は完全自作の競馬予想AIを毎週動かしています。騎手に関する列は67本も入れてありました。勝率、複勝率、コース別、距離別、厩舎との相性。思いつくものは入れたつもりでいたのです。
ところが見習い・減量に関する列はゼロでした。67本もあって、1本も無い。
これは競馬予想に限らない話だと思います。たくさん作ったものほど、抜けている1本に気づけません。数が多いこと自体が「網羅している」という錯覚を生むからです。私の場合、それに気づいたのは列の数を数えたときではなく、実際のレースを見ていて「この☆、AIは見ているんだろうか」と思ったときでした。
データの出どころで一度つまずいた
私は自分の指数ブックに「減量」というファクターを持っています。出馬表の減量マーク(△☆▲★◇)を読んで点数にしているものです。これを使えばすぐだ、と思いました。
ところが2023年7月からのデータしかありません。2021年と2022年は全馬が空欄です。
ここで私は一度、はっきり間違えました。空欄を「減量なし」として数えて測ってしまったのです。空欄は「減量していない」ではなく「まだ記録していない」という意味なのに。当然、数字は汚れました。
これは自分で決めていたことを自分で破った形です。情報が無いことを「なし」と数えない。言葉にすれば当たり前ですが、手を動かしていると簡単に踏みます。空欄を除いて測り直しました。
仕様書を推測せず、機械に位置を突き止めさせた
2021年まで遡るには、別の出どころが要ります。JRDBの生ファイルには13年分入っているのですが、どのバイト位置に見習い区分が入っているのかを、仕様書から読み取らないといけません。
ここで私が取ったのは、仕様書を読む方法ではありませんでした。自分の指数ブックの「減量」を正解として、全部のバイト位置を総当たりさせたのです。
結果、186番目のバイトが一致率100.00%。答え合わせも3つ通りました。
- 指数ブックとの一致率が全期間で99.99%(77,234頭中、食い違いは4頭だけ)
- 区分ごとの斤量が1→マイナス0.93kg、2→マイナス1.92kg、3→マイナス2.88kg、4→マイナス3.76kgと、実際の減量ルールどおりに並んだ
- 2021年から2026年までどの年も100.00%の馬にデータが付いた(値が抜けている馬はゼロ)
クラスごとの減量率も、現実と合いました。未勝利26.1%、1勝クラス24.1%、2勝クラス6.9%、3勝クラス以上は0.0%。上のクラスでは減量騎手はまず乗りません。
ここで言いたいのは、仕様書を推測で読むより、正解を1つ用意して機械に総当たりさせるほうが速くて確実だということです。推測で読むと、合っているかどうかを確かめる方法がありません。正解を持っていれば、一致率という数字で「合っている」と言い切れます。
測り方|「同じ人気どうしで比べる」以外に方法はない
ここがいちばん大事なところです。
減量騎手が乗る馬の3着内率を、そのまま全馬と比べてはいけません。減量騎手は、弱い馬に乗ることが多いからです。そのまま比べると「減量騎手だから負けた」のか「弱い馬だから負けた」のかが分かりません。
だから同じ人気どうしで比べます。1番人気の減量騎手と1番人気の減量なし、2番人気どうし、3番人気どうし……と18の人気帯すべてで比べて、その差を集める形です。人気というのは市場が付けた評価ですから、人気を揃えれば「馬の力の差」はおおむね揃います。
そのうえで残った差が、オッズにまだ反映されていない分ということになります。ここが大事なところで、みんなが知っていることはオッズがもう吸い取ってしまっているので、儲けにはつながりません。知られていないから残っている差にだけ、意味があります。
結果|3着内率が0.80ポイント低い。18の人気帯すべてで同じ向き

これが答えです。18の人気帯すべてでマイナス。プラスに振れた帯は1本もありません。
もし「減量騎手が不利に見えるのは人気のせいだ」というなら、人気を揃えた時点でプラスかマイナスかがばらつくはずです。ばらついていません。18本とも同じ向きです。
平均すると3着以内に来る割合がマイナス0.80ポイント(ぶれ幅±0.11)。ぶれ幅というのは、同じことを何度も測り直したときに、このくらいは動くという幅のことです。0.80に対してぶれが0.11なら、測り直しても符号(プラスかマイナスか)はまず変わりません。
数字としては地味に見えると思います。でも18帯すべてで同じ向きに揃うというのは、偶然ではまず起きません。

年で切っても同じでした。2021年から2026年まで、6年すべてマイナスです。ある年だけの流行りではありません。つまり、来年も再来年も使えるということです。年をまたいで消えない材料は、そう多くありません。
意外だったのは「クラスが上がるほど効く」ことでした

ここが私にとって一番の発見でした。
普通に考えると、下のクラスほど騎手の腕の差が出そうな気がします。実際は逆でした。
- 未勝利 マイナス0.37ポイント
- 1勝クラス マイナス0.28ポイント(まぐれと見分けがつかない)
- 2勝クラス以上 マイナス1.80ポイント
2勝クラス以上が、未勝利の5倍近く効いています。
理由は、たぶん珍しさです。未勝利では4頭に1頭が減量騎手なので、減量であること自体が特別な情報になりません。ところが2勝クラス以上では減量騎手はわずか3.3%。ほとんど乗っていない場所に乗っているという事実そのものが、強い情報になります。
これは他のことにも当てはまる考え方だと思っています。珍しい出来事ほど、そこに含まれる情報は大きい。ありふれた条件で差を探しても、なかなか出てきません。
ただし「儲かる印」ではありません。ここを混同しない
大事なので正直に書いておきます。
単勝の回収率で見ると、差はまぐれの範囲に埋もれます。全体でプラス2.8ポイントに対して、ぶれ幅が±1.8ポイント。18帯のうち7帯はプラス側です。3着以内に来る割合のようにきれいには揃いません。
つまり「減量騎手を消せば儲かる」わけではないということです。オッズのほうは、この不利をそれなりに反映しています。
ではこの発見に価値がないかというと、そうではありません。これは「確率の見積もりを正す情報」です。3着以内に来る確率を、これまでより0.80ポイント正確に出せるようになる。買い目そのものを直接動かす材料ではなく、その手前にある確率を1段だけ精度よくする材料です。
私はこの手の材料を集めています。1本で儲かる魔法の指標を探すより、薄くて確かな材料を何十本も束ねるほうが、はるかに確実に前へ進むと思っているからです。1本で大当たりする指標は、たいてい測り方が間違っているか、もう他の人が使っています。
もう1つの落とし穴|これは単独で入れてはいけない
最後に、実際に使うときの注意を1つ。
減量騎手と、もう1つ「馬齢斤量差」(同じレースの同性・同年齢の馬と比べて何kg違うか)という材料は、絡み合っています。定量戦(馬齢と性別だけで斤量が決まる、賞金や実績で重くならないレース)で調べたところ、馬齢斤量差がマイナス3kg以下の馬は、95〜100%が減量騎手でした。
ということは、減量騎手を入れずに馬齢斤量差だけを入れると、機械は「斤量が軽い=良い」と取り違えます。本当は「軽いのは減量騎手が乗っているからで、その騎手のぶんだけ不利」なのに。
絡み合っている材料は、必ずセットで入れて、セットで測る。片方だけ入れると、もう片方の意味まで背負ってしまって、逆向きの答えが出ます。
まとめ|☆が付いた馬をどう見るか
ここまでを短くまとめます。
- 減量騎手が乗る馬は、同じ人気で比べて3着内率が0.80ポイント低い。18の人気帯すべて、6年すべてで同じ向き
- クラスが上がるほど効く。2勝クラス以上ではマイナス1.80ポイント。珍しい場所ほど情報が大きい
- ただし単勝の回収率では差が出ない。消せば儲かる印ではなく、確率を正すための材料
- 馬齢斤量差と絡み合っているので、必ずセットで扱う
実戦での使い方としては、こうなります。下のクラスの☆は、あまり気にしなくていい。上のクラスの☆は、人気ほどには走らないと思っておく。特に2勝クラス以上で減量騎手が上位人気に推されているときは、割り引いて見るだけの根拠があります。
そして、これを見つけられたのは67本も騎手の列を持ちながら1本も無かったと気づけたからです。持っているものを数えるのではなく、持っていないものを探す。それが一番効きました。
私は毎週150万円の実弾を馬券に張りながら、こういう材料を1本ずつ増やしています。うまくいったものも、空振りしたものも、数字ごとブログに書いています。先に私が転んでおけば、読んでいる方は同じ穴を踏まずに済みますから。



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