牝馬は立て直せないのか|3走続けて負けた1万8千頭の追跡結果

濃紺の背景に折れ線グラフと馬の横顔のイラストを配し、「牝馬は立て直せない」は誤解という白い大きな見出しと、3走続けて負けた1万8千頭という副題を置いたアイキャッチ 横けん予想ファクター

初めましての方、こんにちは!毎週150万円の実弾を馬券に突っ込む男、横けんです。

先日、競馬の話をしていて、こんな言葉を聞きました。

「牝馬は一度メンタルが崩れると、立て直すのが大変らしい」

言われてみれば、私も同じことを何度も耳にしてきました。牡馬なら叩き良化で戻ってくるのに、牝馬は一度崩れるとそのままずるずる終わってしまう。気性が繊細だから、一度嫌なことを覚えると引きずってしまう。皆さんも、どこかで聞いたことがありませんか?

ただ私は、この手の言い伝えを聞くとどうしても確かめたくなる性分でして。本当にそうなのか、手元のデータで数えてみることにしました。

この記事は、中央競馬の2021年2月から2026年8月まで、16万6千頭ぶんの出走記録を使って「牝馬は崩れたら立て直せないのか」を確かめた結果です。崩れたという状態は「3走続けて掲示板を外した(6着以下だった)」と決めて、そこから1年間、その馬がどうなったかを1頭ずつ追いかけました。追いかけたのは1万8千頭ぶんになります。

結論を先に言うと、言い伝えは半分当たっていて、半分は完全な誤解でした。そして誤解のほうを解いていくと、競馬の少し残酷な現実にぶつかりました。

そして後半では、この発見を自作の競馬予想AIの材料として使えるかどうかも検証しています。先に言ってしまうと、肝心の牝馬の部分は採用されませんでした。ところが検証の途中で、まったく別の馬に思わぬ拾いものを見つけてしまいました。それがどうなったかも含めて、そこまで読んでいただけると嬉しいです。

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この記事の要点(先に結論)

  • 「牝馬は立て直せない」は、走らせてもらえる限りにおいては誤解でした。本当に崩れた馬だけを取り出すと、1年以内に3着以内へ戻ってきた割合は牡馬55.4%・牝馬52.3%。ほぼ差がありません。
  • ではなぜそう見えるのか。牝馬は立て直す前に、競走馬をやめさせられているからです。3走続けて負けたあとそのまま中央から消える割合は、1勝クラス以上で牡馬10.0%に対して牝馬14.3%
  • この差は年齢が上がるほど開きます。3歳では牡馬7.3%に対して牝馬11.7%ですが、6歳では牡馬13.6%に対して牝馬25.0%まで開きます。牝馬には繁殖という別の道があるからです。
  • 馬券では、性別で差をつける理由は見つかりませんでした。一見すると崩れた牝馬のほうが回収率は高いのですが、2つの検査で落ちました。
  • 崩れの影響そのものは、牡馬にも牝馬にも同じくらいあります。ただし効くのは単勝5倍を切る人気馬だけ。10倍を超える馬では、崩れていてもいなくてもほとんど変わりません。
  • 思わぬ拾いものは「セン馬」でした。3走続けて負けたセン馬の複勝回収率は85.6%(全体は72.2%)。AIがこの馬たちを低く見積もっていることも分かりました。ただしAIの材料としては、こちらも残念ながら採用されませんでした。

そもそも「崩れた」とは、どういう状態なのか?

まずここを決めないと話が始まりません。「メンタルが崩れた」というのは感覚の言葉であって、データに「メンタル」という項目はないからです。

そこで私は「3走続けて6着以下だった」を崩れた状態と決めました。掲示板を3回続けて外している。誰が見ても調子が良いとは言えない状態です。

ただ、この定義だけで結論を出すのは危ないと思いました。なぜだと思いますか?

もともと力が足りない馬が、大量に混ざってしまうからです。万年二桁着順の馬が3走続けて負けても、それはメンタルではなく単に力が足りないだけですよね。言い伝えが言っているのは、そういう馬のことではないはずです。

そこでもう1つ、厳しい定義を作りました。

「3走とも5番人気以内で出走したのに、3走とも6着以下だった」

走れば来ると思われていたのに、3回続けて期待を裏切った馬。これこそ「崩れた」と呼ぶにふさわしい馬だと思いませんか?この記事では、ゆるい定義と厳しい定義の両方で数字を出していきます。

素直に数えると、確かに牝馬は戻ってきません

まずはゆるい定義(3走とも6着以下)で数えます。その状態になった日から1年間追いかけて、1度でも3着以内に来られたかを数えました。

ここで大事な決まりを1つ。途中で走らなくなった馬も、分母に入れています。走った馬だけを数えると、消えた馬が計算から抜け落ちて実態を見誤るからです。

3走続けて負けたあと、1年以内に3着以内へ来られた割合
性別 件数 1年以内に3着以内 1年以内に勝った
牡馬 7,398件 33.4% 15.9%
牝馬 6,875件 27.8% 11.6%
セン馬 975件 32.4% 14.4%

色の見方:赤=良い数字/青=悪い数字(この記事で共通です)

ひとことで言うと:100頭が崩れたとして、牡馬は33頭が戻ってくるのに、牝馬は28頭しか戻ってきません。5頭の差です。しかもこれはまぐれで出る差ではありません。性別のラベルをでたらめに1000回混ぜて同じ計算をしてみましたが、でたらめで出た差はいちばん大きいもので2.5ポイントでした。今回の差は5.6ポイントですから、遠く届きません。(33.4%と27.8%のようなパーセントどうしの引き算は「ポイント」と呼びます。5.6%と書くと別の意味になってしまうので、この記事では区別しています)

ここで終わっていたら、「言い伝えは正しかった」で記事が1本書けます。実際、私も最初はそう思いました。

でも、ひとつ引っかかったんです。「戻ってこなかった馬」の中身は、いったい何なんだろう?と。

戻ってこないのは、走っていないからではないか?

「1年以内に3着以内へ来られなかった」には、実は2つの意味が混ざっています。

  • 走ったけれど、来られなかった
  • そもそも走っていない

この2つはまったく違う話ですよね。前者なら「立て直せなかった」で正しい。でも後者だとしたら、立て直す機会すら与えられていないということになります。

そこで、3走続けて負けたあとそのまま中央競馬から消えてしまった割合を数えました。ここでは3歳の未勝利戦が秋で制度的に終わる影響を外すため、1勝クラス以上に絞っています。

3走続けて負けたあと、そのまま中央から消えた割合(1勝クラス以上)
年齢 牡馬 牝馬
3歳 7.3%(877件) 11.7%(700件) +4.4ポイント
4歳 7.0%(1,474件) 10.2%(1,463件) +3.2ポイント
5歳 9.6%(1,058件) 16.4%(1,021件) +6.8ポイント
6歳 13.6%(626件) 25.0%(332件) +11.4ポイント
7歳 17.0%(294件) 36.4%(66件) +19.4ポイント
合計 10.0%(4,496件) 14.3%(3,618件) +4.3ポイント

ひとことで言うと:牝馬は3走続けて負けたあとそのまま消えてしまう割合が、どの年齢でも牡馬より高い。しかも年を取るほど差が開きます。6歳になると、牡馬は7頭に1頭が消えるのに対し、牝馬は4頭に1頭が消えていきます。(7歳の牝馬は66件と少ないので、参考程度に見てください)

この理由は、競馬をやっている方ならすぐ分かりますよね。牝馬には繁殖という道があります。6歳、7歳になって成績が上がらない牝馬を、あと1年走らせて立て直しを待つのか、それとも繁殖に上げるのか。牧場としては後者を選ぶのが自然です。牡馬にその選択肢はありません(種牡馬になれるのはごく一握りです)。

走らせてもらえた回数をそろえたら、どうなるか?

ここまで来ると、確かめたいことが1つに絞られます。同じだけ走らせてもらえた馬同士で比べたら、差は残るのでしょうか?

もし牝馬に「立て直せない体質」があるのなら、走らせる回数をそろえても差は残るはずです。逆に差が消えるなら、問題は体質ではなく機会だということになります。

分母の条件を厳しくしていくと、牡馬と牝馬の差はどうなるか(1年以内に3着以内)
どこまでを分母に入れるか 牡馬 牝馬 まぐれで説明できるか
全部(消えた馬も分母に入れる) 33.4%(7,398件) 27.8%(6,875件) 5.6ポイント できない
そのあと2走以上した馬だけ 40.0%(6,149件) 36.0%(5,279件) 4.0ポイント できない
そのあと3走以上した馬だけ 46.4%(5,176件) 44.5%(4,143件) 1.9ポイント まぐれの範囲

ひとことで言うと:走らせてもらえた回数をそろえるほど、差はきれいに縮んでいきます(5.6 → 4.0 → 1.9)。3走以上させてもらえた馬同士で比べると、その差はもうまぐれで出る範囲に入ってしまいます。

本当に「崩れた」馬だけを取り出すと?

そしてこれが、この記事でいちばん大事な表です。冒頭で作った厳しい定義、「3走とも5番人気以内で出走したのに、3走とも6着以下」の馬だけを取り出しました。走れば来ると思われていたのに、3回続けて裏切った馬です。

期待を裏切り続けた馬の、その後1年間
性別 件数 この1走を最後に消えた 1年以内に3着以内 1年以内に勝った 2走以上した馬だけで見ると
牡馬 314件 8.9% 55.4% 32.8% 60.1%(281件)
牝馬 241件 12.4% 52.3% 28.6% 59.7%(211件)
3.5ポイント 3.1ポイント(まぐれの範囲) 4.2ポイント 0.4ポイント(ほぼ同じ)

ひとことで言うと:本当に崩れた馬に限れば、牝馬が立て直しにくいという証拠は出ませんでした。とくに「そのあと2走以上させてもらえた馬」で見た60.1%対59.7%は、ほとんど同じ数字です。100頭のうち60頭が戻ってくる。牡も牝も変わりません。

つまり、こういうことです。

牝馬は立て直せないのではありません。立て直す前に、競走馬をやめているのです。

言い伝えを作った人たちが見ていたものは、たぶん本当のことです。「あの牝馬、崩れてからそのまま終わっちゃったな」という記憶は、実際に正しい。ただしその原因を「メンタル」だとした部分が違っていた、ということだと思います。

馬券としては、どう買えばいいのか?

さて、ここからは我々にとって本題です。この話は馬券に使えるのでしょうか?

3走続けて負けた馬が次に出てきたとき、その1走だけを買った場合の回収率を出しました。単勝は2021年2月から2026年8月までの全部、複勝は実際の払戻データがある2023年から2025年で計算しています。表にある「3着内率」は、3着以内に来る割合のことです。

3走続けて負けた馬の、次の1走を買った場合の回収率
買った馬 頭数 3着内率 単勝回収率 複勝回収率 平均人気
牡馬・3走続けて負けたあと 9,139 9.9% 59.3% 60.4% 10.3
牡馬・そうでない馬(比べる相手) 67,247 29.7% 75.3% 76.8% 5.9
牝馬・3走続けて負けたあと 8,476 9.3% 71.0% 75.8% 10.8
牝馬・そうでない馬(比べる相手) 47,172 26.1% 72.9% 74.7% 6.4

ひとことで言うと:牡馬は3走続けて負けると回収率が大きく落ちます(複勝76.8%→60.4%)。ところが牝馬はほとんど落ちません(74.7%→75.8%)。「世間が牝馬のメンタルを気にして嫌いすぎるから、オッズが甘くなっているのでは?」という筋書きが立ちます。

正直に言うと、この表を見たときは「見つけた」と思いました。牝馬の崩れは世間が思うほど深刻ではないのに、みんなが言い伝えを信じて嫌う。だからオッズが甘くなる。理屈としてもきれいです。

でも、そう思ったときこそ疑うべきなんですよね。私は過去に何度も、この手のきれいな筋書きで痛い目を見てきました。そこで2つの検査をかけました。

検査1:オッズをそろえたら、差はどこへ行ったのか?

回収率を比べるとき、平均人気が違う馬同士を並べても意味がありません。そこで単勝オッズが同じくらいの馬同士で比べ直しました。

単勝オッズをそろえた場合の、3走続けて負けた馬の回収率
単勝オッズ 牡馬 単勝 牝馬 単勝 牡馬 複勝 牝馬 複勝 どちらが上か
5〜9.9倍 95.4%(499頭) 96.4%(361頭) 83.3% 98.5% ほぼ互角
10〜19.9倍 99.6%(1,021頭) 85.4%(809頭) 85.9% 75.2% 牡馬
20〜49.9倍 91.8%(2,011頭) 75.4%(1,798頭) 80.4% 77.7% 牡馬
50〜99.9倍 64.4%(1,882頭) 89.9%(1,794頭) 67.4% 77.2% 牝馬
100倍以上 21.8%(3,635頭) 53.6%(3,646頭) 34.9% 72.0% 牝馬

ひとことで言うと:どちらが上かはオッズ帯によってバラバラでした。そして「牝馬のほうが買える」ように見えた分は、ほぼ全部が100倍以上の超大穴から出ていました。100倍以上の馬なんて、私は買いません。皆さんも買わないですよね?

検査2:年で分けたら、向きが逆になった

もう1つの検査です。年ごとに分けて、毎年同じ向きが出るかを見ました。私の経験上、これで落ちるものが本当に多いんです。

3走続けて負けた馬の次の1走・単勝回収率を年ごとに分ける
牡馬 牝馬 どちらが上か
2021年 71.2% 75.8% 牝馬
2022年 48.7% 94.7% 牝馬
2023年 69.0% 86.7% 牝馬
2024年 46.9% 74.9% 牝馬
2025年 66.6% 47.9% 牡馬
2026年(8月まで) 57.1% 40.6% 牡馬

ひとことで言うと:2021年から2024年までは牝馬が上でしたが、2025年と2026年ははっきり逆転しています。向きが年で入れ替わるものは、本物の妙味ではなく、当たり外れのブレです。

というわけで、「崩れた牝馬は買い」という話は採用しません。拾いたい気持ちはありました。でも数字が2つの検査で落ちている以上、そこで粘るのは自分に都合のいい理屈を探しているだけですからね。

では、崩れた馬は買えないのか?

ただし、「3走続けて負けた」という事実そのものは、ちゃんと減点材料になります。効くのは人気馬のときだけです。

単勝5倍を切る人気馬に限ると、3走続けて負けた直後の3着内率は牡馬60.7%→47.3%、牝馬57.4%→48.5%とはっきり落ちます。ところが単勝20倍から50倍の馬では、牡馬13.4%→12.8%、牝馬13.0%→12.7%とほとんど変わりません。

ひとことで言うと:「3走続けて負けている」は、人気馬を買うときだけ効く減点材料です。そしてそこに性別は関係ありません。牡馬も牝馬も同じくらい落ちます。人気薄では、崩れていてもいなくても変わりません。(この帯は牡馬91頭・牝馬68頭と少ないので、断定はしません)

AIの材料として使えるのか?

さて、ここからが私にとっていちばん大事な部分です。この発見を、自作の競馬予想AIの材料にできるでしょうか?

まず前提として、これは前日に分かる情報です。「この馬は3走続けて6着以下だった」「この馬は牝馬だ」は、出馬表を見れば分かります。未来の情報を使ってしまう心配(これをやると成績が良く見えるだけの偽物になります)はありません。ここは合格です。

そこで「この情報を完全に使い切ったら、AIの予測はどれだけ良くなるか」という上限を測りました。ただしこの測り方には落とし穴があります。自分で当てはめて自分で測るので、必ず改善が出てしまうのです。そこで「同じ大きさのでたらめなグループ分け」で何百回も同じことをして、その結果と比べました。でたらめでも出る改善量を超えられないなら、その情報には価値がないということになります。

牝馬の話は、残念ながら採用されませんでした

結論から言うと、「牝馬×3走続けて負けた」という組み合わせは、でたらめなグループ分けとほとんど変わりませんでした。複勝で見た改善量は、でたらめの平均を下回るくらいです。

残念ながら、採用されませんでした。この結果は受け入れることにします。

ここで「AIはもう知っていた」と書いて終わりにすると、AIが勝手に賢いように読まれてしまうので、そこはきちんと書きます。

AIが賢いのではありません。私が3年かけて積み上げた2,716本の材料が、すでにこの情報を持っていたからです。

具体的に言うと、私のAIには最初から「性別」という材料が入っています。そして「前走の着順」「2走前の着順」「3走前の着順」も、それぞれ独立した材料として入っています。AIの中身は決定木という仕組みなので、「牝馬で、かつ前走6着以下で、かつ2走前も6着以下で、かつ3走前も6着以下」という組み合わせは、私が教えなくても自分で作れるわけです。

つまり今回の発見は、すでにAIが持っている材料の組み合わせを、私が言葉にしただけだったということになります。悔しいですが、そういうことです。

逆に言えば、もし私が「性別」も「前3走の着順」も入れていなかったら、今回の発見は立派な新材料として採用されていたはずです。積み上げてきたからこそ、新しいものが入りにくくなっている。これは健全なことだと思っています。

ところが、思わぬところに拾いものがありました

ここからが面白いところです。実は最初、私は測り方を間違えていました。

牡馬・牝馬・セン馬の6つのグループをまとめて1つの材料として測って、「効かない」と結論を出しかけたんです。ところがこれ、数の少ないグループが薄まって消えてしまう測り方なんですよね。全体の1.4%しかいないグループの効果が、残りの98.6%に埋もれてしまう。

そこで1マスずつ、単独で測り直しました。すると、まったく予想していなかった馬が浮かび上がってきたんです。

AIの予測は当たっているか(実際の複勝率÷AIの予測。1.00ならAIは正しく見ている)
どんな馬か 頭数 実際÷AIの予測 読み方
全体(比べる相手) 91,594 0.939 AIは全体的に少し高く見ている
牡馬・3走続けて負けた 8,719 0.877 AIが思うより走らない
牝馬・3走続けて負けた 7,523 0.918 全体並み
セン馬・3走続けて負けた 1,254 1.222 AIが思うより走る

ひとことで言うと:言い伝えが名指ししていた牝馬は、ほぼ全体並みでした。ズレていたのはその両隣だったんです。3走続けて負けた牡馬はAIが思うより走らない。逆に3走続けて負けたセン馬は、AIが思うより走る。

セン馬というのは去勢された牡馬のことで、気性の問題を抱えて去勢に踏み切った馬が多い。その馬が3走続けて負けたあと、AIの想定を超えて走ってくる。これは面白いと思いませんか?

実際の回収率も出してみました。

3走続けて負けた馬を性別ごとに買った場合の回収率(2023〜2025年)
買った馬 頭数 単勝回収率 複勝回収率 複勝が全体より良いと言える確からしさ
牡馬・3走続けて負けた 13,277 69.9% 64.8% 0.7%
牝馬・3走続けて負けた 11,431 59.4% 72.2% 50.8%
セン馬・3走続けて負けた 1,956 89.8% 85.6% 91.8%
全体(比べる相手) 137,633 71.1% 72.2%

ひとことで言うと:3走続けて負けたセン馬の複勝回収率は85.6%。全体の72.2%を13ポイント上回っています。牝馬(72.2%)は全体とまったく同じで、逆に牡馬は64.8%とはっきり低い。言い伝えが「牝馬は」と言っていたところは、実際には牡馬とセン馬の話だったわけです。

この数字がまぐれかどうかも確かめました。同じ数だけでたらめに馬を選んで比べる作業を何百回も繰り返したところ、セン馬の旗はでたらめの8.5倍のズレを出しています。年ごとに見ても2024年・2025年とも同じ向きでした。

ただし、まだ「使える」と決めるには早いんです。頭数が1,956頭とそれほど多くなく、回収率の幅も広い。そこで本番とまったく同じ形で、AIの材料として採用できるかテストしました。その結果を正直に書きます。

追記:セン馬も、残念ながら採用されませんでした

公開したその日のうちに、本番と同じ判定にかけました。候補の作り方を4通り(セン馬で3走連続負けなら1/何走続けて負けたかの本数/直前3走の平均着順/性別を問わない対照)用意し、それぞれ単勝と複勝1勝クラス以上と未勝利で測って、16通り全部を見ました。

結果は16通りすべて、残念ながら採用されませんでした。

いちばん効いてほしかった「セン馬で3走連続負け」の複勝でも、2024年は+0.000138、2025年は−0.000056年で符号がひっくり返っています。私が採否の基準にしている水準(中身のない列を足したときでも出てしまう改善量)にも、まるで届きませんでした。

正直、悔しいです。回収率85.6%という数字を見つけたときは、久しぶりに手応えがありました。でも数字が要らないと言っている以上、ここで粘るのは自分に都合のいい理屈を探しているだけです。この結果は受け入れることにします。

なぜ落ちたのか。理由は牝馬のときとまったく同じでした。私のAIには「性別」も「前走・2走前・3走前の着順」も、すでに材料として入っている。だから「セン馬で3走連続負け」という組み合わせは、私が教えなくてもAIが自分で作れるわけです。2,716本を積み上げてきたからこそ、新しく足すものが入りにくくなっている。これは健全なことだと思っています。

ひとつだけ補足すると、「3走続けて負けたセン馬の複勝回収率が85.6%だった」という事実そのものは消えません。AIの材料にならないことと、私が出馬表を見るときの目安にならないことは別の話です。ただし1,956頭ぶんの数字で幅も広いので、これを根拠に馬券を厚くすることはしません。

それにしても、自分の測り方の失敗から拾いものが出てくるとは思いませんでした。6つまとめて測って「効かない」で終わっていたら、この話には一生気づかなかったわけです。数の少ないものは、まとめて測ってはいけない。今回いちばんの教訓はこれかもしれません。

まとめ

  • 「牝馬は崩れると立て直せない」は、走らせてもらえる限りにおいては誤解でした。本当に崩れた馬(人気を背負って3走続けて負けた馬)で見ると、1年以内に3着以内へ戻る割合は牡馬55.4%・牝馬52.3%。2走以上させてもらえた馬なら60.1%対59.7%で、ほぼ同じです。
  • そう見える理由は、牝馬が立て直す前に競走馬をやめているからです。1勝クラス以上で、そのまま中央から消える割合は牡馬10.0%・牝馬14.3%。6歳では13.6%対25.0%まで開きます。
  • 馬券では、性別で差をつける理由は見つかりませんでした。崩れた牝馬の回収率が高く見えるのは100倍以上の超大穴のせいで、2025年・2026年は逆転しています。
  • 「3走続けて負けた」は、単勝5倍を切る人気馬を買うときだけ効く減点材料です。そこに性別は関係ありません。
  • AIの材料としては、牝馬の話は採用されませんでした。私が積み上げた2,716本の材料が、すでにこの情報を持っていたからです。
  • 代わりに、3走続けて負けたセン馬という拾いものがありました。複勝回収率85.6%(全体72.2%)。ただしこちらも本番と同じ形でテストしたところ、16通りすべて残念ながら採用されませんでした。年で符号がひっくり返ったからです。

最後に、この検証で私がいちばん考えさせられたことを書いておきます。

3走続けて負けた6歳の牝馬は、4頭に1頭がそのまま中央から消えます。牡馬なら7頭に1頭です。そして走り続けられた馬同士で比べれば、牝馬も牡馬と変わらず戻ってくる。つまり消えた牝馬の中にも、あと3走もらえていたら戻ってきた馬が確実にいたということになります。

言い伝えというのは、たいてい何かを見て作られています。今回のものも、見ていた光景は本当でした。ただ、その理由の付け方が違っていた。「あの馬は気持ちが切れた」ではなく、「あの馬には次がなかった」だったわけです。

そして、ここが大事なところなのですが。この違いが分かると、出馬表の見え方が変わります。3走続けて負けている馬に印を打つかどうか迷ったとき、「牝馬だから立て直せない」で切るのは間違いだと分かる。代わりに見るべきは単勝5倍を切っているかどうか(人気馬のときだけ3着内率が60.7%から47.3%へ落ちます)であって、性別ではない。1つ確かめるだけで、判断の材料が1つ増えるわけです。

こういう検証を、私は毎週このブログで公開しています。今回のように自分の測り方の失敗まで書くのは、正直かっこ悪いです。6つまとめて測って「効かない」と結論を出しかけて、危うくセン馬の話を見落とすところでした。でも私が先に転んでおけば、読んでいる方は同じ穴を踏まずに済みますよね。そうやって積み上がっていけば、来年の私はもう少しマシな予想ができるはずです。

次はどの言い伝えを疑いましょうか?気になるものがあれば、ぜひ教えてください。

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