凱旋門賞の馬券は、JRAでも買えます。ところが「どんな馬を買っていたら、払い戻しがいくら戻ってきたのか」、つまり回収率まで計算したデータは、探してもほとんど見つかりません。
そこで、凱旋門賞を16のファクター(予想の材料)ごとに分けて、回収率を全部計算しました。G1勝ち数・前走の格・人気・ゲート番・前走着順・前走からの間隔・前哨戦・年齢・性別・斤量・凱旋門賞の出走経験・レーティング・調教国・日本調教馬・騎手・調教師です。使ったのは2つのデータです。
- 日本の馬券(JRA):JRAが凱旋門賞の馬券を売った過去10年(2016〜2025年)の全158頭。実際の払い戻しで、単勝と複勝の回収率を出しています。
- 英国のオッズ:過去20年(2006〜2025年)の全320頭。英国には日本と同じ複勝の馬券がないので、単勝の回収率だけです。
どのファクターも、1枚の画像の上が日本の馬券の10年、下が英国のオッズの20年です。10年分で見えた傾向が、20年に広げても同じ向きなら、偶然ではない可能性が高くなります。
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表の見方
- 回収率=その条件の馬を全頭、100円ずつ買ったときに戻ってきたお金の割合です。100%を超えていれば、買った金額より多く戻ってきたことになります。
- 表の回収率の下にある小さな数字はぶれ幅(データの偶然で、回収率が測り直すたびにどのくらい動く幅か)です。同じデータから何千回も選び直して計算したとき、回収率の95%がおさまる範囲を表しています。範囲が広いほど、少ない高配当に支えられた数字なので信用しにくい、という意味です。
- どの表もいちばん上の「全体」と比べて、良いか悪いかを見てください。
先に、数字を読むときの注意点です。凱旋門賞は1年に1レースなので、10年分でも勝ち馬は10頭しかいません。日本の馬券の単勝回収率は全体で130%ですが、その半分以上は2021年のトルカータータッソ(単勝11,050円)1頭の払い戻しです。単勝の数字は大穴1頭で大きく動くので、日本の馬券は数の多い複勝の回収率を中心に見ていきます。
G1勝ち数別の回収率|いちばんはっきり差が出た

今回いちばん差がはっきり出たのが、凱旋門賞の前にG1を何勝していたかです。
- G1を2勝以上していた56頭は、10年で8勝。複勝率39.3%、複勝回収率146%でした。ぶれ幅も81〜223%で、ほかの条件よりずっと上に寄っています。
- G1未勝利の54頭は、勝ったのが1頭だけ。3着以内に入ったのも2頭だけで、複勝回収率は17%でした。
英国のオッズの20年分でも、G1を2勝以上の84頭は11勝・単勝回収率164%、G1未勝利の77頭は1勝・単勝回収率17%でした(2012〜2015年はG1勝ち数の記録が取れなかったので、記録がある226頭で計算)。凱旋門賞は「格」がそのまま出るレースだ、ということが10年と20年の両方の数字で分かります。
前走の格別の回収率|前走G1組が強い

- 前走がG1だった81頭は6勝。複勝率27.2%、複勝回収率116%でした。
- 前走がG2だった60頭は2勝で、3着以内は6頭。複勝回収率は30%でした。
英国のオッズの20年分でも、前走G1の159頭は15勝・単勝回収率128%、前走G2の129頭は3勝・単勝回収率23%でした。10年と20年で同じ向きです。地元フランスの前哨戦のニエル賞・フォワ賞はG2なので、次の「前哨戦」の結果ともつながっています。
人気別の回収率|1番人気より2〜3番人気

- 1番人気の10頭は3勝。単勝回収率63%、複勝回収率66%で、1番人気を買い続けても元は取れていません。
- 2〜3番人気の20頭は、複勝率45.0%、複勝回収率127%でした。
- 7番人気以下の97頭は単勝回収率173%です。ただしこれは、トルカータータッソ(13番人気)・ヴァルトガイスト(9番人気)・ダリズ(10番人気)の3頭の払い戻しによる数字で、複勝回収率は66%でした。
英国のオッズの20年分(人気も英国のオッズの順位)では、1番人気が単勝回収率81%、2〜3番人気が84%、4〜6番人気が97%でした。1番人気を買い続けても元が取れない点は同じですが、日本の10年で目立った2〜3番人気の強さは、20年でははっきりしませんでした。
ゲート番別の回収率|内のゲートが有利

ゲート番は、コースが同じパリロンシャン開催の年だけで数えました(2016・2017年はシャンティイ競馬場で開催されたので外しています)。馬番ではなく、スタートの枠の位置(ゲート番)です。
- 1〜5番の38頭は、複勝率34.2%、複勝回収率108%でした。
- 11番より外の47頭は、3着以内がわずか3頭。複勝率6.4%、複勝回収率38%でした。単勝回収率235%は、2021年に12番ゲートから勝ったトルカータータッソの1頭分です。
英国のオッズの18年分(ロンシャン開催の年)でも、1〜5番の複勝率は29.5%、11番より外は10.8%。内のゲートの馬のほうが、3倍近く3着以内に来ています。
今年の日本調教馬は、アドマイヤテラが12番、メイショウタバルが13番のゲートです。データの上では、外のゲートは厳しい条件になります。
前走着順別の回収率|前走で勝っている馬

- 前走1着の62頭は、10年で7勝。単勝回収率262%でした。
- 前走4着以下の41頭は1勝だけで、単勝回収率30%でした。
英国のオッズの20年分でも、前走1着の123頭は14勝・単勝回収率136%、前走4着以下の81頭は単勝回収率33%でした。10年と20年で同じ向きなので、偶然ではなさそうです。
前走からの間隔別の回収率|22〜35日がいちばん

- 前走から22〜35日あいていた60頭は4勝。複勝回収率110%でした。
- 36〜56日あいていた30頭は、複勝回収率41%でした。
- 57日以上あいていた12頭は、3着以内が1頭だけでした。
英国のオッズの20年分でも、22〜35日は単勝回収率129%、36〜56日は20%、57日以上は23%と、同じ向きでした。間隔が空きすぎた馬は、凱旋門賞では割り引いたほうがよさそうです。
前走がロンシャンの前哨戦だった馬の回収率

前哨戦とは、凱旋門賞の3〜4週間前に同じパリロンシャンで行われるニエル賞・フォワ賞・ヴェルメイユ賞などです。
- 前走がロンシャンの前哨戦だった50頭は2勝。複勝率14.0%、複勝回収率45%でした。
- それ以外の108頭は8勝。複勝回収率89%でした。
「同じコースの前哨戦を使った馬が有利」と思われがちですが、日本の馬券の10年では逆の結果でした。ただし英国のオッズの20年分では、前哨戦組が単勝回収率72%、それ以外が81%で、差は小さくなります。
年齢別の回収率|3歳より4歳

- 4歳の54頭は5勝。複勝回収率135%でした。
- 3歳の62頭は、複勝回収率49%でした。
- 6歳以上の13頭は、3着以内に1頭も入っていません。
英国のオッズの20年分でも、3歳の単勝回収率53%に対し、4歳は143%です。3歳馬は斤量が軽いので有利と言われますが、回収率の上では、10年でも20年でも3歳より4歳のほうが妙味がありました。
性別の回収率|勝率は牝馬が高い

- 牝馬の32頭は5勝。勝率15.6%で、牡馬(勝率4.0%)の4倍近くです。
- ただし回収率は、牝馬が複勝回収率60%、牡馬が79%でした。日本の馬券では、牝馬の妙味は少なかったことになります。
英国のオッズの20年分では、牝馬の70頭が10勝・勝率14.3%・単勝回収率138%、牡馬は単勝回収率61%でした。勝率は10年でも20年でも牝馬が高いですが、回収率は日本の10年と英国の20年で向きが分かれました。
斤量別の回収率

凱旋門賞の斤量は、年齢と性別で決まります(いまは3歳牡馬56.5kg・3歳牝馬55kg・4歳以上の牡馬59.5kg・4歳以上の牝馬58kg)。そのため、年齢別・性別の結果と重なります。
- 59.5kg(4歳以上の牡馬)の75頭は、複勝回収率104%でした。
- 58kg(4歳以上の牝馬)の21頭は4勝・勝率19.0%で、複勝回収率は48%でした。
- 56.5kg(3歳牡馬)の46頭は、複勝回収率47%でした。
英国のオッズの20年分は、昔の年の斤量が取れなかった馬が108頭あるので、「記録なし」として分けています。
凱旋門賞の出走経験別の回収率

- 以前に凱旋門賞を走ったことがある32頭は4勝。複勝率31.2%、複勝回収率114%でした。
- 初めての126頭は、複勝回収率65%でした。
英国のオッズの20年分でも、出走経験のある馬の3着以内の割合は29.2%で、初めての馬(16.5%)より高くなっています。ただし単勝回収率は、経験あり70%・初めて79%で差はありませんでした。
レーティング別の回収率|125以上は3着以内に半分

レーティングは、JRAが毎年発表する出走馬一覧の数字です(2016年は発表に載っていないので2017〜2025年)。
- 125以上の11頭は、6頭が3着以内に入りました。複勝率54.5%、複勝回収率159%です。
- 114以下の25頭は、3着以内が1頭だけでした。
125以上は11頭しかいないので、ぶれ幅は40〜341%と広めです。G1勝ち数と同じく、「実績が抜けている馬が強い」という向きは一致しています。なお、レーティングは2017年以降しか記録がなく、英国のオッズで数えても同じ年の同じ馬になるため、20年の表はありません。
調教国別の回収率

- 地元フランスの69頭は4勝。複勝回収率89%でした。
- イギリスの29頭は4勝・勝率13.8%と勝ち切っていますが、複勝回収率は52%でした。
- アイルランドの29頭は1勝で、単勝回収率27%でした。
- ドイツの10頭は1勝ですが、それが2021年のトルカータータッソなので、単勝回収率は1,105%になっています。
英国のオッズの20年分では、アイルランドが単勝回収率26%、イギリスが47%、フランスが70%でした。ドイツは18頭で2勝(2011年デインドリーム・2021年トルカータータッソ)で、単勝回収率は567%です。
日本調教馬の成績

JRAが馬券を売った10年で、日本調教馬は19頭が出走して、3着以内は0頭でした。英国のオッズの20年分に広げても、32頭で勝ち馬は0頭、3着以内は3回(2010年ナカヤマフェスタ2着、2012年・2013年オルフェーヴル2着)です。
騎手別の回収率

3回以上乗った騎手を1人ずつ出しました。日本の馬券の10年では、1人あたりの騎乗は多くても10回なので、参考程度に見てください。
- L.デットーリ騎手は10年で7回乗って2勝、3着以内が5回。複勝回収率203%でした。
- 日本の馬券の10年では、C.ルメール騎手(6回)・W.ビュイック騎手(6回)・武豊騎手(5回)・O.ペリエ騎手(5回)は、3着以内がありませんでした。
英国のオッズの20年分では、L.デットーリ騎手が16回で3勝・3着以内8回。C.スミヨン騎手は17回で1勝・3着以内6回、単勝回収率15%でした。
調教師別の回収率

3頭以上出した厩舎を出しました。こちらも頭数が少ないので、参考程度です。
- A.ファーブル厩舎は10年で17頭、1勝・3着以内5頭。複勝回収率143%でした。
- A.オブライエン厩舎は10年で24頭と最多で、1勝・3着以内5頭。複勝回収率101%でした。
- JC.ルジェ厩舎は12頭で2勝、複勝回収率105%でした。
英国のオッズの20年分では、A.オブライエン厩舎が51頭で2勝・単勝回収率26%でした。出走頭数は多いものの、勝ち切れていません。
まとめ|凱旋門賞で回収率が高かった馬
日本の馬券の10年と英国のオッズの20年の両方で、同じ向きに回収率が高かったのは次の馬でした。
- G1を2勝以上している馬(日本の10年で複勝回収率146%・英国の20年で単勝回収率164%)
- 前走がG1だった馬(日本の10年で複勝回収率116%・英国の20年で単勝回収率128%)
- 前走で勝っている馬(日本の10年で単勝回収率262%・英国の20年で136%)
- 前走から22〜35日の馬(日本の10年で複勝回収率110%・英国の20年で単勝回収率129%)
- 4歳馬(日本の10年で複勝回収率135%・英国の20年で単勝回収率143%)
- パリロンシャンの1〜5番ゲートの馬(日本の8年で複勝回収率108%・英国の18年でも3着以内の割合が外のゲートの約3倍)
この6つの条件は、10年と20年の両方で同じ向きでした。2〜3番人気(日本の10年で複勝回収率127%)と、前哨戦組の不振(日本の10年で複勝回収率45%)は、20年では差が小さかったので、少し割り引いて見ています。
どれも頭数が多くないので、1つの条件だけで決めるのではなく、いくつ重なっているかで見るのがおすすめです。逆に、G1未勝利・前走G2・外のゲート・前走4着以下・間隔が空きすぎ、が重なる馬は、数字の上ではかなり厳しくなります。
実績のある馬が素直に来るレースだということは、10年分と20年分の両方で数字が示しています。海外のレースは情報が少なく、なんとなくの印象で買われがちです。だからこそ、回収率の数字で買う馬を絞るだけで、ほかの人と差がつきます。
私が先に全部計算しておいたので、あなたは表を見て、今年の出走馬に当てはめるだけで済みます。こうした回収率の計算は、ほかのレースでもこのブログに書いています。日曜の凱旋門賞は、この数字をもとに予想を組み立てます。



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